Scenario

Chapter4『不器用』

***

キイッ

(木製のドアを開け、光はそっと、葵の部屋に入った。)

(開け放たれた二階の窓から、朝の光と風が入り。 レースのカーテンを揺らしている。)

「二度寝したな。」

(部屋に入るなり、光はつぶやいた。)

(夏樹より背が高く、体格の良い光は、飾らなく、無造作でシンプルな服装だった。
淡い光が差すような、薄い黄味がかった色の、軽く短い髪が。 風に揺れる。)

(光は、男性と見まがうような、空気を醸し出す。)

「葵・・まだ寝てるの?」

(光は、葵の眠る、白いベッドの上に、気軽に腰を下ろした。)

(葵は、まだレースのネグリジェのままで。 ベッドの上に丸くなるように膝を抱えて眠っていた。)

(お腹周りに、薄い毛布が掛けられていたが、丸まった手足は、外に出て。 寒そうだった。)

(薄紫の、長いソバージュの髪がシーツの上に広がり。 葵の頬を隠していた。)

「ネコみたい。」

(光は、両手をベッドに付き、身体を支えながら。 ベッドの上の葵を、愛しい物を見る様に。 覗き込んだ。)

「ん・・。」

-1-

(声にまどろむ葵の手首に、銀色のアクセサリーが光り。 FOT No.6と刻まれている。)

チリッ

(葵の動きに、アクセサリーが鳴った。)

「光・・? おはよう。」

(自分を見下ろしている光の両腕に挟まれ、葵は驚き目を覚ました。)

(薄紫の長くカールした髪と、同じ色の瞳が美しい。)

「朝から大胆ね?」

「・・もう少し寝てれば良かったんだ。」

(光は、いらだったように身体を起こした。)

「くすくすっ。」

「葵、また占いか?」

(ベッドわきの机の上に、カードが置かれていた。)

「ええ。 新しい街が決まったみたい。」

「そ。 俺はべつにどこだっていい。」

「どうせ、欠片を全て集めるまで、ここからは出られないんだ。」

「ここが嫌い?」

「いや。 葵は。」

「好きよ。」

-2-

(葵はベッドの上に座り、光を見つめ微笑んだ。)

(薄紫の髪は、葵の腰から、ベッドの上につくほど長かった。)

(光は、葵を見つめながら、無意識に左の肩に手を触れた。)

(肩に留めたピンバッジには、FOT No.7と刻まれている。)

「でも、誰かがここを出ていくわ。」

「出ていく? まさか。」

「契約に反すれば、国から消されるんじゃなかったか。」

(葵は立ち上がって、服を選び始めた。)

「光は、消されるなんて信じていないんでしょう?」

(鏡で衣装合わせしながら、鏡越しに光に話しかける。)

「ああ。 俺たちは能力者集団だ。 一般人に消されてたまるか。」

「そうね。 でも、あの人たちは乱暴だから。」

「まぁな。 相当な武力を持ち出せば、俺たちに害を加えられるかもしれないぜ。」

(葵は、光に振り返った。)

「光。 制裁は、暴力とは限らないわ。」

「・・どういう事だ?」

「きっと、国の人たちは怖い事を考えている。 だから。 じっとしているだけでは

変えられない事もあるの。」

-3-

「幸せをもたらすもの。 それを探しに、

誰かが今日出かけていく。」

「・・俺には分からないよ。」

「そのうち分かるわ。 ふふっ。」

(葵は微笑んだ。)

***

-4-









Chapter4
『不器用』

Fragment of Time・・・時の欠片の道しるべ





シナリオは、Chapterの各場面です。

物語全文はこちらから。

Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ

SCENARIO

『太陽と月』

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