■依子「はぁ・・!?///」
(依子の、素っ頓狂な声が。 カフェに響いたのは、程なくしてからだった。)
■依子「どこの誰かも知らない男を・・拾ったの!?」
■依子「あんたっ、いい加減にしな。」
■依子「あんたは、あたしの大事な。」
■依子「親友なんだよ。」
■依子「変な男と一緒になってもらっちゃ困るんだ!」
(依子の心配をよそに、千歳は幸せそうに、
エプロン姿でキッチンに立っていた。)
■千歳「ふふっ。 行くところが無いっていうから。」
■千歳「住み込みで働いてもらっているの。」
(依子は首を振り、言葉も無いという風に、目を閉じ。
片手で顔を覆った。)
■依子「・・あきれた。 そんな余裕無いでしょうが。」
(目を閉じた依子のところまで。 コーヒーの香りが、漂ってくる。)
コトンッ
■ルイ【どうぞ。】
(依子は、香りと気配にはっとして。 目を開けた。)
■依子「・・!」
(見上げるほど、背の高い男性が、依子に微笑んだ。)
■ルイ【カプチーノです。】
(依子に男性の声は届かなかったが。)
(深い紺色の瞳の輝く笑顔は、
依子の心を射抜くには十分で。 依子は、開いた口がふさがらなかった。)
■依子「は・・っ///」
(続いて、テーブルに置かれた、カップを覗き。
依子は吹き出した。)
■依子「・・可愛いクマの絵。 ラテアート?」
■依子「くっくっ。 負けた。」
■依子「彼、何て?」
(千歳はキッチンから出て、依子の傍に来た。)
■千歳「カプチーノです。って。」
(男性は、キッチンに戻ると。 片づけを始めた。)
■依子「・・良い男。」
■依子「名前は?」
(依子はため息をつき、カプチーノに口を付けた。)
■千歳「瑠衣。(るい)」
(聞こえた音に、千歳が字を当てた。)
■依子「ふぅ。」
■依子「本当なんだ、」
■依子「障害があるって。」
■依子『彼は、言葉を話すことが、出来なかった。』
(依子の真剣な顔に、千歳は首を振った。)
■千歳「いいえ。」
■千歳「彼の言葉が、わたしにはわかるもの。」
(不安が無いわけじゃない。 でも、千歳には他の道は見えなかった。)
■依子「声も出せず。 裸足(はだし)でやって来た、
素性(すじょう)もわからない、そしてあんたに恋してる。」
(依子は思いを馳せた。)
■依子「まるで、人魚姫みたいね。」
■依子「恋をしてはいけない人に、恋をすると、
泡(あわ)になって。
最後は消えるの。」
(依子の言葉を聞いても。 千歳は、変わらず、微笑んだ。)
■依子『あたしは・・。』
■依子『あの時、止めるべきだった・・。』
***
『8月1日(懐古)』
Chapter1『natural cafe『青』』
Fragment of Time・・・時の欠片の道しるべ
シナリオは、Chapter101『8月1日(懐古)』・Chapter102『8月1日(継承)』の各場面です。
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