HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter20 『迷子』 20-7


(流れ出た黒髪は、まるで蜘蛛の糸の様に。
男性の周囲を、覆うように伸び。 形を得る。)

(長く、美しい手足。)

(赤紫色の、不思議に輝く服を着る。 美しい女性が、
姿を現した。)

(女性は、青髪の男性の肩に。
しなやかな長い両腕をかけ。 男性の耳元で、そっと
囁いた。)

「地上は、なかなか良い処よ。

フェルゼン。」

「食べ物が美味しいから。」

(クロエはそう言って、細く小さな顔を寄せ、
フェルゼンの耳元に。

唇を寄せた。)

「ふふふっ。」

(微笑むクロエに、赤い瞳が、うざったそうな視線を投げる。)

(クロエが口づけた、側の。 フェルゼンの左の首筋には。
不思議な黒く丸い幾何学模様のマークが彫られていた。)

「でも、残念。」

「この世界では、まだ私でさえ、

実体を持てない。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ