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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter56 『傍にいる』 56-12


『〈あっはっはっ。〉』

(男性は、笑った。)

『〈上がれ。〉』

『〈艶と、楓が待っている。〉』

(晃は、ため息混じりに、男性の指示に従い。
大玄関へ上がった。)

(並んで歩く、晃の肩の高さに。
男性の、翡翠色の瞳の視線はあった。)

『歩く度、聞こえる。 独特な黒い着物の音。』

『日の光を受ける。 金の家紋の色彩。』

『仄かな香の香り。』

『何より。 隣に立った感覚は、あまりにリアルで。

記憶と同じ角度で、僅かに、俺を見上げる視線が。

俺を揺さぶった。』

(男性は、晃の隣で。
翡翠色の瞳を揺らし、笑った。)

『〈泣くのか?〉』

「・・・っ!」

(絶句した晃に、廊下の向こうから、救いの手がやって来た。)



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