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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter80 『太陽と月(月)』 80-10


「まだ、姿を見せないのか? あの“魔法陣”の主は誰だ?」

「“欠片”が目的じゃないのか・・。 それとも、僕を試しているのか・・。」

(夏樹を、疲労感が包み。 そっと、壊れたブロック塀の上に、
腰を下ろした。)

『“闇”を閉じ込める異空間なら、現実の世界とは違う。 何が壊されても、平気だ。』

『けど、

見慣れた景色が壊れるのは、幻だとわかっていても。 こたえるな・・。』

(夏樹は、白い両手で、静かに顔を覆い、目を閉じた。)

(うつむき座る、細い背中を。 癒す様に、土埃を含む風が、静かに撫でた。)

***

「かしこまりました。 すぐにお迎えに参ります。」

(知らせを受けた菖蒲は、千波の言い付けで。 訪れていた本部から、
戻ろうと。 天井の高い、巨大な玄関ロビーを足早に移動した。)

(高層ビル最上階へ続く、吹き抜けの天井に。 張り巡らされた
四角いガラス窓から射し込む日差しが、眩しく頭上を照らしても。)

(大理石の床を進む菖蒲の心は晴れなかった。)

ガガッ

(巨大な正面扉が開き。 流れ込む風が、菖蒲の黒い後ろ髪を、
後方へ押し流した。)

ヒュアッ・・



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