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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter9 『行くぞ』 9-1


「行きますよ、夏樹様。 揺れますから、

しっかり掴まっていて下さい。」

(菖蒲は、リムジンの運転席から、後部座席に座る夏樹に向かって振り返り、
四角い縁取り眼鏡の奥の瞳で、楽しげに微笑んだ。)

「うん。」

(後部座席の柔らかな白いクッションに、身体を沈みこませ。 夏樹はリラックスして
菖蒲に進路をまかせた。)

(座席は広く。 夏樹は、足を投げ出し、心地よくもたれた。
お腹がいっぱいのせいもあり、紺色の瞳は少し眠そうに瞬きする。)

「聖様が、無茶な空間の繋ぎ方をしていそうですから。 さぁ、

空間通路に入ります。」

(菖蒲は、白手袋の手で、大きくハンドルを切った。)

キキッ

ゴォォッ

ブブンッ

(白いリムジンは、緑あふれる屋敷の裏手から、走り出すと

目の前に現れた大きな黒い穴の中へ、空間の扉に吸い込まれ消えた。)

ゴオオッ

(車窓は、緑の木々から一変し。 黒と紫が入り混じる、マーブル模様の気流の中へ。
七色に光るいくつもの空間を通り過ぎた。)



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