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Voice ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter20 『迷子』 20-10


(カップを片づけに行った佐織とチイが戻り。
何やら、下向きに、屈んでいる紫苑を不思議そうに見つめた。)

紫苑「クロが、居なくなっちゃった。」

「さっきまで居たのに・・。

一人で帰ったのかなぁ。」

(佐織も、長身の身を屈めて見たが。
近くには居ない様だった。)

(起き上がった拍子に、流れる長い髪が、
風に揺れる。)

佐織「大丈夫よ。 野良ネコちゃんなんだから、

自分で帰るわよ。」

チイ 「でも、小さかったから。 少し心配ね。」

(チイの丸い穏やかな瞳が、心配そうに通りを見つめた。)

紫苑「わたしちょっと、探してくる!」

「2人は先に帰っていて。」

(紫苑は、2人の返事を待たずに、
一人、茶色い皮鞄を手に走り出した。)

タッタッタッ

佐織「あっ!

ちょおっと、紫苑!

待ちなさいようっ。」

(佐織の声の先、遠くなる紫苑の皮鞄に。
走る歩調に合わせ、小さなクマのマスコットが揺れた。)

***



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