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Voice ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter36 『はじまりの夜・ひとひら』 36-2


(菖蒲は、小箱を握る白手袋の手に。 僅かに力を込めた。)

夏樹「ん?」

(手の中を見つめていた夏樹が、顔を上げ。
深い紺色の瞳が菖蒲を見た。)

(オレンジ色の街灯を受ける、深い紺色の瞳と、
透き通る白い肌から、その場を包み込む。
温かな光が、発せられているように。 菖蒲は感じた。)

(夏樹を見た途端。
突然。 これを渡してはいけないと思った。)

菖蒲「気をつけてくださいね。」

(小箱は、まだ白手袋の手の中にあった。)

(菖蒲が躊躇している様子に。
夏樹は、両腕を組んで、ため息をついた。)

夏樹「ふぅ・・。 何だよ? 改まって。」

「僕に、渡しに来たんだろう?」

(菖蒲は、黒縁眼鏡の奥で、気まずそうに瞬いた。)

菖蒲「はい。

ですが・・。 ただ。 いえ、その・・。」

夏樹「ははっ。

何だよ?」



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