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Voice ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter56 『傍にいる』 56-9


(守る、木々が消え。 スピードを抑え損ねた刀は。
晃の、喉元のわずか手前で。 ぴたりと止まった。)

時宗『〈わたしに・・、命じるな。〉』

『〈晃。〉』

(漆黒の着物に身を包んだ、少年は。
刀を掴んだまま。 晃に微笑んだ。)

(美しく。 整う黒髪は、艶と似ていた。)

(しかし、笑みを含んだ、艶やかな大きな瞳は。 翡翠色に怪しく輝き。
これまで居た。 どの妖魔よりも、重い気を発していた。)

(まるで、少年の重厚な黒い着物に。 切り捨てた妖魔の怨念が、
染み込んでいるように思えた。)

「“闇”と、妖魔は違うようだな。」

(晃はふと呟いた。)

「俺たちは、“闇”を消せば良いだけだが。 お前は、

今もそうして。 自分の身に受けているのか?」

「因果な仕事だな。」

『あるいは、“闇”にも・・。 浄化が必要なのだろうか。』

(少年は、刀を握ったままの左手を。 高い晃の背中にまわした。)

キンッ

「・・ん。」



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