Chapter36 『はじまりの夜・ひとひら』 36-1
「夏樹様。
お待たせ致しました。
《Friend》をお持ち致しました。」
(オレンジ色に染まる二階の玄関を照らす明かりの下で、
菖蒲の黒い燕尾服が煌めいた。)
(夏樹は、玄関先で。
目の前に立つ。 少し背の高い菖蒲を見上げた。)
「ああ、ありがと。」
(四角い黒縁の眼鏡に、細い黒髪が流れる様子は。
いつもと同じだった。)
(自然に調和した、金の装飾がほどこされた燕尾服は、一日中着ていたが、
整っている。)
「それが、そうなんだ?」
(夏樹は、菖蒲から受け取ろうと。
一歩外へ出た。)
「・・はい。」
(菖蒲の白手袋の手に、小さな金色のジュエリーボックスが、
握られていた。)
「どれ?」
(菖蒲が、なかなか渡さないので。
夏樹は、玄関ドアにもたれ。 少し菖蒲の側に寄った。)
「夏樹様・・。」
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