* Fragment of Time *

時の欠片の道しるべ

Chapter56 『傍にいる』

Chapter56 『傍にいる』 56-1


ガサッ ガサッ・・

(晃は、電車や、バスを乗り継いだ後。
誰も、すれ違う相手さえ居ない。 山深い田舎道に、辿り着いた。)

(すでに、2時間は歩き。 道は進む度険しくなり、晃の。
艶やかな黒の服に、緑の草の雫と。 青々とした香りを残す。)

「・・はぁ。」

ガサッ ガサッ

(足元の草は。 晃の腰の高さに達するほどで、
傾斜する。 道なき道を見上げる、晃の額に。 汗が光った。)

「そろそろ、踏みつぶしたらまずいな。」

「ここは本来、人が通るべきところじゃない。」

「ふぅ。」

(一呼吸置き。 大きな左手を、目の前に続く。 草道に向け、
ゆっくりとかざした。)

サラサラサラッ

(青々と茂る草は、晃の進む先へ、まるで道を開ける様に左右に分かれ。
進む足元を、開いた。)

「(すぅ・・、はぁ・・。)」

(頭上高くそびえる、緑の巨木と。 その先に青く光る空に、
晃は深呼吸した。)

「ここはまるで、異界との境界だな。」



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