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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-201


「来たか・・。 FOT。」

「ひっひっ。」

「待ってたぜ。」

(狐次郎は、煙草を片手に。 ビルの間の空を、見上げた。)

「日が、出らぁ・・。」

(眩いものを見るように、目を細めた。)

『俺は、子供の頃、もう一度、あいつに手を差し伸べることが、

出来なかった。』

『“闇”に飲まれた街に。』

『恐ろしさに、その場を動けず。

立ち尽くしていた・・。』

(煙草の煙が目に沁み。 朝日に目がにじんだ。)

『あいつに手を差し伸べたのは、

あの男だけ。』

(それが出来たのが、自分だったらと。 幾度後悔しても、
過去を取り戻すことは出来なかった。)

(あの日、海に取り残された、夏樹と聖を。 太陽が照らしていた。)

「あの“闇”が、もう一度、動き出す。」



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