HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-1


チュンチュン・・ ピチチッ

(静かな朝のキャンプ場を、紫苑は一人歩いた。)

(爽やかな海風が、優しく頬を撫で。 明るいベージュ色の髪を、
揺らす。)

(柔らかなレースのスカートが靡き。 心地良い芝生の香りに包まれても。)

(紫苑は、皆の元に、すぐに戻る気持ちになれなかった。)

「・・しっかりしなさい、紫苑。」

「今日は、夏樹くんのお誕生日。」

「みんなで、楽しく過ごそうって、決めたんだから・・。」

(両手で頬をぱしぱし叩いてみても。)

(先程の出来事が、脳裏によみがえり、大きな茶色の瞳は潤んだ。)

「・・だめ。 笑えそうにないわ;」

「青葉ちゃん・・。」

(紫苑は弱気な心を奮い立たせようと、青葉の励ましの言葉を思い出した。)

[「伝えられたんだね。 良かったね。

ずっと、応援しているからね。」]

***

「・・どうして、好きなんて。」

「言ってしまったの・・・。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ