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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-30


『彼女は。 夏樹を守り、身をていして。 死んだのだろうか?』

『違う。』

『僕が。 彼女を愛したからだ・・っ。』

(銀の指輪の光る手が、流れる銀髪を掻きむしった。)

(黄金色の瞳が、滲む。)

「・・はぁ・・、はぁ。」

『あの日、粉々に砕けた、彼女の身体・・。』

『“時の欠片”を集めるために。』

『“闇化”を引き起こしたいと願う心を、閉ざしてきた。』

「それも、終わりだ。」

「・・世界を守る“結界”を、もう。」

「僕には創れない。」

(聖は、異空間に創り出した、白亜の洋館の。 幻の自室の中で。
椅子に身をゆだね。 入口付近から聞こえた物音に、瞳だけ、
ドアを見つめた。)

「・・橘。」

「僕は、破壊を望んでいる。」

(乱れた銀髪が、美しく。 アンティークの椅子に、白く輝くスーツの肩に
流れても。 黄金色の瞳の煌めきは、色あせなかった。)

『夏樹。』



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