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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-29


時を過ごした。)

(聖が粒樹のために用意した場所は。 小さな美しい離島だった。)

(美しい自然と、海。 花に囲まれ。 アンティークの置かれた洋館で、
二人は過ごした。)

(そこは、粒樹の故郷。 エアリエル国にどこか似ていた。)

『彼女と過ごした、わずかな時間。』

『あれが、最も幸せな時間だった。』

『二度と、取り戻すことが、出来ない時だ。』

『もう一度、あの場所へ、行きたい。』

(夢うつつで、幾度も訪れるバラの海で。
粒樹は、聖に微笑んだ。)

(バラの花びらに包まれ。 聖の腕の中に、粒樹はいた。)

『たとえ、異空間の創り出す。』

『幻だとしても。』

(堪えようとしても、思い出は、聖の両手から零れ落ちる。)

「ああ・・っ。」

『強力な力を持つ者が、触れれば、相手を壊す。』

(甘美な誘惑と共に、恐ろしい幻覚が、目を閉じれば襲い来る。)

『あの日。 この世に初めて“闇”が生まれた日。』



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