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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-222


『普通の人間として、

生きて見たかった。』

『ずっと、ずっと願っていた。』

『そんな、願いを。』

『今ここで、叶えられるなど。』

『思いもしなかった。』

(代償は大きく、夏樹の胸を締め付けた。)

「・・菖蒲。」

(夏樹は絞り出し、
やっと、菖蒲に、告げた。)

「風の声が聞こえない。」

(菖蒲は、夏樹の悲しみを。
全身に受け止め。)

(瞳を見開いた。)

(深い紺色の瞳が、赤く。 涙に滲んでいる。)

「夏樹様。」

(菖蒲の心は、引き裂かれる思いがした。)

(白手袋の手が、そっと。
力強く、夏樹の背中を支え。)

(二人は、明けて行く、空の下で。



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