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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter18 『刷り込み』 18-1


***

カチャカチャッ

(夏樹は、白い両手にあふれるほど集まった、透明に光る
時の欠片を見つめた。)

「随分集まりましたね。 夏樹様。」

(リムジンの運転席から、後部座席に座る夏樹に向かい振り返り、
菖蒲は。 四角い縁取り眼鏡の奥の瞳で、優しく微笑んだ。)

「・・そうだな。

一日でこんなに集まると思わなかった。」

「切りが無い。」

「大丈夫です。 いつか。 終わる日が来ます。」

(菖蒲は、ハンドルを再び、小町通りに向け。
視線を、明るい夕暮れの街へ注いだ。)

「ああ。」

(何年も続けて来たことだが、夏樹には。 今はじまったばかりの様な
気がしていた。
それでも、いつか終わる日が来ることを願った。)

「・・僕は〜・・。 そろそろ〜・・、

部屋のベッドで〜・・寝たいなぁ〜・・。 ぐぅ。」

(後部座席の下、
自前の布団にくるまり。 白はまどろんだ。)



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