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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter20 『迷子』 20-11


待ちなさいようっ。」

(佐織の声の先、遠くなる紫苑の皮鞄に。
走る歩調に合わせ、小さなクマのマスコットが揺れた。)

***

「! 美味しいですね。」

(リムジンに戻った菖蒲は、
ストロベリーカフェのお勧めメニューに、舌鼓を打っていた。)

「夏樹様も、お食べになれば良かったのに。」

「僕は良いよ。 ほんとに甘い物好きなんだな。」

(後部座席で、静乃から送られたデータのプリントに目を通し。
夏樹は気が無い風に返事した。)

(甘い香りに、薄目を開けた白が、
迷惑そうに。 美味しそうに食べている菖蒲を見つめた。)

「う〜ん・・、見ているだけで〜・・。

胸やけしそう〜だね〜・・。 菖蒲ちゃ〜ん・・。」

「失礼ですよ! 白さんっ。」

(後部座席を振り返った菖蒲に、
視線を向けた夏樹が、ふと気付いた。)

「あれ?

菖蒲。 ハンカチは?」

(夏樹は、深い紺色の瞳で見つめ、白い指で、



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