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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter5 『美しいもの』 5-2


チリンッ

(彩の聴診器に、夏樹の胸のそばで、何かが当たる金属音がした。)

(夏樹は、意に介していなかったが、ティーシャツを動かした拍子に。 夏樹の首元から、
細い鎖がかかっているのが見えた。)

(聴診器は、その先、夏樹が胸元にかけている。 銀の指輪に当たったのだ。)

「はっ・・。」

(彩は、夏樹を診るたび、銀の指輪の存在を心に留めずにいられなかった。)

(だが、何も気にしていないふりをした。)

『夏樹君は、何も知らない。』

(彩は、データを取りながら、視線をそらし。 夏樹の胸の音に、耳を傾けた。)

『そう分かっていても、あの青い瞳に見つめられると。 見透かされているような気が

する。』

『私は・・、全ての人々を救う。』

(そう言い聞かせ、彩は夏樹の瞳に、視線を戻した。)

(彩の視線をとらえ、夏樹が真剣な表情をした。)

「彩さん?」

「大丈夫よ。 今日は、外出しても構わないわ。」

(彩の胸元に、細い銀の鎖にかけられた、銀の十字架のアクセサリーが煌めいていた。)

「ほんとうに? ありがと。」



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