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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter55 『時の流れ』 55-1


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(一羽の白い鳥が、朝靄の中、緑の森を抜け。
羽ばたいた。)

ピィピピピッ

(小さかったが、その翼は艶やかに光り。 優雅に風を切りながら。
屋敷の正面に青々と茂る。 緑の木々の間を飛んだ。)

パタタッ

(月に一度訪れるその日を、待ち望んでいた艶が。
自室の窓際から、その特別な白い鳥を見つけ。)

(慌てて部屋から、飛び出した。)

「・・はっ。」

ガチャッ・・

トットットッ

「兄様っ。」

「・・兄様っ。」

(少し古びた、アンティークの木製廊下が、温か味のある洋館。
走っていく艶の足元には、赤い絨毯が敷かれていた。)

(赤い小さな靴は、軽やかで。 小さな頬は嬉しさに赤らんでいた。)

(今は明かりの灯っていない、アンティークのランプの下。
小さな艶の肩に、真っ黒で、整った艶やかな、ストレートの黒髪が鮮やかに揺れる。)



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