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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter56 『傍にいる』 56-3


「まるで、ここまで来た者に、敬意を払い。 易々と通そうとしている様に見えるが。」

(鳥居の手前から、晃は開かれた土地の、左右に茂る。 背の高い木々に、
語りかけた。)

「普通の奴なら、ここを通ろうとは思わないだろうな。」

コォォォォー・・

(鳥居の向こうから、この世の物とは思えない。 得体の知れぬ、気配が。
流れ出していた。)

『〈ここを通れば。〉』

『〈二度と戻れなくなる。〉』

『〈それでも、良いなら・・。〉』

『〈わたしに・・、会いに来い。〉』

(“闇”とは違う、悪しきエネルギーが渦巻く向こうから。)

(一際強い。 時宗の波動が、晃の元へ、流れ出た。)

「・・・。 ばかが。」

「亡霊らしく。

少しは大人しくしていろ。」

(言葉と裏腹に、晃の、切れ長の黒い瞳が。
微笑み。 煌めいた。)

トッ・・

(晃は、慎重に。 しかし、笑みを湛えたまま。 一歩、緋色の鳥居の中へ



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