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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter56 『傍にいる』 56-5


ギャギャッ・・

「くっ・・。」

(赤黒く渦巻く周囲に目を凝らし。 寸前で身をかわした。)

『霊感などなくても。

ここが、あの世に近いことが俺にも分かる。』

「何だ・・今のは?」

(晃に牙を向いた、奇妙な声で鳴くその生き物は。 鋭い歯に、ギョロリとした目を持つ。
空を飛ぶ魚に見えた。)

「あいつの友達か?」

『・・霊感が無くて困るのは。

ここに居るやつらの。 どれが良い奴で。 どれが悪霊なのか、

俺には分からないことだ。』

「あいつの知り合いなら、傷つけたらまずい。」

「見た目がグロくても・・。 可愛がっている場合があるからな。」

「・・分からん。 お前か・・それともお前か。」

(晃は、すでに周囲を覆う。 魑魅魍魎たちを、順に指さした。)

(ふわふわと浮かぶ。 赤紫の火の玉。 尖った耳の、小動物。 姿形の曖昧な
者達が、晃をじわりじわりと取り囲んだ。)

(辺りは、仄暗く。 別世界と化した。)



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