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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter60 『ターゲット』 60-1


「この辺りだな。」

(左腕にはめた、黒い腕時計を見つめると。 文字盤には、無数に淡く点滅する
赤い光が溢れていた。)

(中でも強い一点を見つけ、深い紺色の瞳が瞬いた。)

「街中はやっぱり多いな。 光さんと葵さんが出てるから、大丈夫だろうけど。」

バタンッ

「そうですね。」

(一足先にリムジンから降りた夏樹の後を追って、菖蒲も白い大きなリムジンの
運転席から。 風見市内の繁華街の一角に降り立った。)

(周囲の風から受ける気配に、注意を払いながら。 夏樹は後ろに振り返り、
菖蒲に微笑んだ。)

「今度は、近づき過ぎるなよ。」

「僕も自信満々で守り切れる訳じゃないからな。」

(そう言いながら微笑む夏樹の笑顔は、菖蒲には。 必ず守るという
自信に満ちている様に見え。 思わずほっとして、微笑んだ。)

「はい。 夏樹様、お気を付けて。 行ってらっしゃいませ。」

「ああ。」

(街をゆく風は、夏樹を包む込み。 誘う様に、柔らかに吹いた。)

(菖蒲をその場に残し、青空から街中に吹き抜ける風に触れながら。
繁華街へ一歩。 足を踏み出した。)

サワサワサワッ・・



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