HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter72 『家族』 72-1


「夏樹っ!

だからいつもお姉ちゃんが言うでしょうっ!?」

「良く寝て。 良く食べて。

良く遊びなさいって!」

(夜の帳が下りた桜ヶ丘の頂上に。 オレンジ色の温かなライトが左右を照らし出す。
白いアーチの扉が開き。

心地良いオレンジに染まる白壁の小さなアパートの前で、
千波はカンカンに怒り。 両手を腰にあてて。
ほんの僅かながら、背の高い弟の顔を。 まじまじと見つめた。)

「うっ、ごめん。」

(夏樹は気まずそうに菖蒲と二人、並んでアーチの前に立ち。
許してもらえなければ、家に入れてもらえない様な気さえしながら。
小さく肩をすくめた。)

「すみません、千波様・・っ。

私が良くお休みになる様に、お伝えしなかったせいで・・。」

(菖蒲は白手袋の両手を上げ、千波をなんとかなだめようとしたが。
ちらりと見た千波の視線はまるで小さな子をしかるかの様で。 ピンク色の頬を
ふくらませていた。)

「千波ちゃん。 でしょv

菖蒲くんのせいじゃないのっ!」

「良い、夏樹。

少しは自分のことも気にして。 もうっ。 聖と一緒。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ