HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter8 『遅刻予定のアポイント』 8-6
(お辞儀した時雨の向こうから、足音が聞こえる。)
「兄様っ!」
(時雨を押しのけ、廊下に出た艶が、黒髪をなびかせ、晃のそばへ駆け寄った。)
「聖にこき使われてはなりませぬ。」
(背の高い晃を見上げる、小さな艶に。 晃は微笑んだ。)
「俺の周りは、無謀なやつが多いな。」
「くっくっ。」
(側に立つ聖が苦笑した。)
(晃は、大きな手で、艶やかな黒髪を撫でる。)
「今日は、早く帰る。」
「時雨に、叱られたからな。」
(晃に頭を撫でられ、艶は、先ほど自分が押しのけた。 時雨の無表情な顔を見上げた。)
「・・感謝する。」
(艶は晃から離れ、足早に、その場を後にした。)
「可愛らしゅうございますな。」
(橘が後姿を見送りながら、微笑んだ。)
「晃君にはもったいないね。」
「だまれ。」
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』