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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-1


(黒い柱の立ち並ぶ、官邸の地下。 会議室の中に、その人物は居た。)

(日中でありながら、窓の無い室内は、仄暗く。 閉ざされた空気のせいか、
天井に灯るランプの明かりさえくすぶって見え。 黒い巨大なテーブルと、
室内を支える両端の大きな黒い柱たちは、不思議な重力を、その場に与えているようだ。)

「・・首相。 FOT総司令官へ。 命を下しました。」

(広い室内には、数人の人物しかいなかった。
空席の黒い椅子の向こう。 テーブルの最奥に座る人物へ。 黒服の執事が身を屈め、
凍てついた、無表情のまま。 そっと告げた。)

「・・ふむ。」

「風見市内での美術館の一件。 どれだけの数の一般人の、

記憶消去を見逃してやったと思うか? ・・相手は国家指定の危険人物だ。」

「街に放してやる代償に。 何も得られないでは・・済まされない。」

「奴も目的は同じ。 もう、断る理由はあるまい。」

「・・これは合法的な実験だ。 国益の、いや我々人類の為の。」

(灰色の少しカールした髪に、頬骨が目立つ、筋張った顔。
眼鏡の奥の、光の無い瞳が、
長テーブルの正面、一番奥から。 扉前にいつも座るはずの、人物を思い睨みつけた。)

「時は、待ってはくれない。」

「全ては奴の犯した罪だ・・。 粒樹さえ、失わなければ、

このプロジェクトは先代で完遂していた。」

「FOTに頼り、時の欠片を集めるしか方法がないとは・・。」



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