HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter90 『恋心』 90-1


「紫苑。 今日夕方何時ごろ行く?」

(明るい日差しの射し込む午後、窓際から2番目の。
紫苑の席に現れた佐織は、ぱたぱたと、汗ばむ襟元をあおぎながら。
まぶしい窓からの光ににっこりと微笑んだ。)

「少し、早く行かないと混むよね?」

「毎年すごい人出だから。 だれか一人は、はぐれるわよ。」

(紫苑は、机の上の薄ピンク色のノートと可愛らしい筆記具を鞄の中に片付けながら。
窓から吹き込む、熱のこもる風に。 眩しそうに立つ佐織の。 長いストレートの髪が、
茶色に光り、赤いネクタイが揺れるのを見た。)

「うん。 門前通りの前で、待ち合わせしよう。」

「美空ちゃんと、ピュアちゃんに家でママが、浴衣を選んでくれることに

なっているから。」

「一緒に行くね。」

「OK♪」

(佐織は、席から離れようとして腰を上げ。 トントンッと、紫苑の隣、
窓際の空席の机を指先でたたいた。)

「誘っておきなさいよっ。」

「えっ///」

「紫苑〜っ。」

(紫苑はとてもできない気がして、困り。 佐織を見た。)

「佐織ちゃん〜っ///」



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