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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-1


「これは・・っ、まさか。 これ程のものとは・・。」

(会食の華やかなテーブルの上へ。 各人の手もとへ、配られた画像資料は。
重役の大臣たちの、顔色を変えさせ。 脂汗を流す者。
青ざめ、資料に触れるのを恐れる者もいた。)

カタッ カチャッ

(十数名の、男たちが、食い入るように画像を見つめる中。
ただ一人。 正面の、高い窓ガラスから浮かび上がる。 巨大な、この国最大の都市、
鮮やかな摩天楼を背に。 脂ののったステーキを、頬張る男がいた。)

「・・(ごくっ)。 どうした?」

「食べながらでいい。 遠慮をするな。 ここのステーキは格別だろう。」

(男は、筋張った手でナイフを持ち、荒々しく肉を噛み切り。 飲み込みながら、
酒に酔いグラスを手にした。)

「ワインも上質な物だ。 我々の、長年の苦労が。 実ろうとしている。」

「祝杯をあげずにいられようか・・!」

(怖気づく周囲を鼓舞する、男の声に。 その見開かれた、黒い。 光の無い瞳に。
恐ろしさを覚え、息を飲むものが、ほとんどだった。)

「・・、しかし。 首相・・。」

「これは・・。 これほどの、大きさの“時の欠片”が、あの子供の中に

眠っているとは・・。」

(そこにいる誰もが、惨事を予感した。 時の欠片は、闇化しなければ取り出せない。
つまり、闇化するのだろうか。)

「これも・・、“闇化”するのか・・?」



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