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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter10 『接触』 10-10


(菖蒲は、夏樹が早足なので、息切れし、立ち止まった。)

「んんっ。」

(思わず、きつく締めていた、黒いネクタイを緩めた。)

(高く昇って来た日差しと、人波の熱気。 ピチッと着こなしている、
黒の燕尾服のせいで、
微かに汗をかき始めたからだ。)

「ったく、もう・・。 夏樹様っ!」

(菖蒲は、走り出した。)

***

「ねぇっ、見て!

あの人っ。 きゃぁっ、本物の執事みたい。」

「かっこ良いねv」

「モデル?」

(通りすぎる菖蒲を見て、女の子達が、声をあげた。)

(カラフルな色にあふれる、街中で。 黒い服はとても目立っていた。)

(流れる細い黒髪に。 明るい日差しを反射する、滑らかな燕尾服。
腕や襟元。 裾に付いた、金の装飾が、木漏れ日の下を通り過ぎるたびに光った。)

***

トットッ

(夏樹は、菖蒲の数メートル先を行き、街行く人々に意識を向けていた。)



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