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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter10 『接触』 10-9
(紫苑は、桜の花飾りの付いた、ピンク色のシャーペンを手に。
物思いにふけり、遠い視線で、黒板を見た。)
(英文を、開いたノートに書き写し、ふと頬に吹きつける涼しい風を感じた。)
サアッ
「・・・。」
(真ん中の席から、左手にある窓辺を見た。)
(風は、段違いにカットされた、明るいベージュ色の髪を揺らす。)
(流れた髪に手を添えて、紫苑は、窓の外の新緑の葉を見つめた。)
『窓際の席が良いな。』
『中庭が見えて、気持ちが良いから。』
***
「夏樹様っ! 待って下さいっ。」
(平日でも人通りの多い、小町通りを。 人混みを分けながら、
菖蒲は夏樹の背中を追った。)
トットットッ
「まったく・・、夏樹様には自分がVIPだとか、他の組織に狙われるかもしれない
とか・・。
そういう自覚は無いのでしょうか?」
「はぁ・・。」
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