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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-10


「けど、こんな風に。 海を見るのは、好きだ。」

「懐かしい気がする。」

(紫苑は、瞬き。 夏樹を見つめた。)

(海を見つめる、深い紺色の瞳は、優しく。 穏やかだったが。 その白い肌は、
氷のように冷たく。 真夏の太陽の下でさえ。 恐ろしく冷たい気配を、
紫苑は感じた。)

「夏樹くん。 わたしに、話してね。」

「力になりたいの。 何も出来ないかもしれないけれど。」

「皆も、そう思っているからね。」

(深い紺色の髪を、潮風が撫で。 蒼白な頬に、深い紺色の瞳が。
きらきらと輝き揺れた。)

「ありがとう。」

(微笑んだ夏樹は、紫苑から視線を外すと。 砂浜の方へ。 立ち上がり、歩き始めた。)

「夏樹くん・・。」

(潮風が、二人の間に流れ。 紫苑の髪を柔らかに揺らし、夏樹のシャツの胸元に。
銀の指輪が揺れた。)

チリリッ・・

【・・うふふっ・・】

【・・わたしに・・、“鍵”をちょうだい・・。】

(紫苑の中に、もう一人の自分の声がした。)



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