HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-144


ゴワァァァァーーッ!!

ザババババーッ・・!!

(息もつかせぬ間に、大量に出現した水が。 男を捕らえ飲み込んだ。)

「ぐわぁ・・っ・・!」

(ちょうど頭上を通りかかる電車が、男の悲鳴をかき消し、水音と重なった。)

ザパーン・・ッ

(水が引いた後、男が倒れたはずの。 地面を見つめ、白は瞬いた。)

「・・あっれ〜・・。」

(異空間から離れ、風見市に戻る景色に。 異空間の中を走っていた同じ電車が、
音をたて、走り去る。 ただ、そこに男はいなかった。)

「・・捕まえたと、思ったけどな〜・・。」

「・・。」

(白のうつろな瞳の奥が。 急激に、強く光ると。 白は背後の、頭上へ顔を向けた。)

(繁華街のビルの上に、人影がある。)

(くゆる煙草の煙が。 白く、空に消える。)

「・・狐次郎くんが逃がしたってことは〜・・。 国の人間か〜・・。」

「へっへ〜・・。」

(白は、へらへらと笑い。 遠くの狐次郎を見上げ、手を振った。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ