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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-147


「はっ。」

(千波は、賑わうスーパーの前で、感じた気配に顔を上げた。)

「繁華街のほうだわ。」

「“闇”は止まっているのに。」

(千波は胸に手を当てた。 傾き始める太陽に、クローバーの髪飾りが光る。)

「夏樹・・。」

(千波には、夏樹が何を思っているのかが、分かった。)

(街行く人々の中に立ち止まり、感じることだ。 千波の右手には、キャンプのごちそうに
料理する食材が。 スーパーの袋に入り、握られている。)

(千波は立ち止まり、足元を見た。 その場所は。
何の能力も持たない千波が、容易に。 立つことができ。
人々に溶け込める場所だった。)

(いかに努力をしても。 能力を持つ夏樹が、得ることができない
ものだった。)

「・・夏樹は、ただ。 自分のままでいたいの。」

「自分らしく、生きてみたいの。」

(千波は、うつむいたまま。 自分の足元を見つめた。)

「どうして・・。 わたしじゃ、なかったの。」

(千波の待つ、スーパーの前に。 白いリムジンが止まった。)

キキッ ガチャンッ



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