HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-148


「お待たせ致しました。 千波様。」

「少し目立ちますが、お荷物が多い様でしたので、こちらへ。」

「お持ち致します。 ・・千波様・・?」

(菖蒲は、千波から荷物を受け取ろうと、白手袋の手を差し出した。)

「え?」

(菖蒲は驚き、荷物を受け取り損ねた。 スーパーの袋は、千波の足元に落ち、
中から野菜が、二人の足元に転がった。)

「・・千波様。」

(千波は、ぽろぽろと涙をこぼしていた。 そっと、菖蒲の燕尾服の胸元に、
頬を寄せた。)

「・・っ、ひっく。 菖蒲くん・・。」

「夏樹に、何かあったら・・、どうしよう・・。」

「聖は、もう居ないの。」

「あの時みたく・・。 助けてはくれない・・。」

「わたしなら、よかった・・。」

(千波の涙は、止まらなかった。 ぽろぽろとこぼれ落ち、菖蒲の襟元を濡らした。)

「夏樹に、戦ってほしくない。」

(千波の正直な気持ちに、菖蒲の胸は、熱くなった。)

「私もです。」



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