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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter100 『涙』 100-16
(菖蒲は、胸に白手袋の手を当て。 深々と、夏樹にお辞儀した。)
「畏まりました。」
(夏樹は、ほっとしたようで。 深い紺色の瞳は、穏やかに笑っていた。)
「夏樹くんっ。」
(遠く、呼ぶ紫苑の声に。 夏樹は、応え。 太陽の下に歩き出した。)
「・・今、行く。」
ザザーンッ・・
(眩い太陽の光が、夏樹の気配を、かき消しているような気がした。)
(夏樹は、微笑んでいたが。 氷のように鋭い波動が、全身から流れ出す。
傍に立つだけで、痛むほどの冷たさを感じる肌に。
夏樹が力を閉じ込めている気がした。)
『傍にいなければいけないのは、夏樹様の方ではないか。』
『ソラ様の魔法が、包んでいるはずなのに。』
『以前より、酷く力を感じる。』
(四角い黒縁眼鏡の奥で、菖蒲は。 目を細めた。)
『・・堪えていらっしゃる。』
「皆様と、少し。 距離を置きたいご様子ですね。」
(菖蒲の鋭さに、千波ははっとし、明るい茶色の瞳を大きく見開いた。)
「皆様と一緒に居たいときに。 辛いことです。」
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