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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-190


「おめでとうって、言わなくちゃ。

二人を見ていればわかる。」

「今、すれ違っていても。 二人の行く道は一つ。」

「だから、自信を持って。

大丈夫。 きっと、幸せになる。」

「隣にいるのが、わたしじゃなくてもいい・・。

幸せな二人を、見てみたい。

いつか、その時まで。 ずっと、友達でいて。」

(青葉は、通信機の向こうで。 紫苑に向けられた夏樹の声を
聞くことしか出来ない自分を、悔やんだ。)

「・・うっ、ひっく・・。 ううっ・・。」

(願いたい自分の気持ちの向こうに。 隠された、悔しい気持ちを
打ち消したかった。)

「・・ふっ・・ うっ・・。」

「夏樹くんに会いたい・・。」

(青葉は、冷たく閉ざされた病室の中で。 無機質な機械音に囲まれ。
絶望的な想いだった。)

(命を延ばそうと、無数に繋がれる機械に。 四角に囲まれる白い壁が。
青葉の自由を奪う様だ。)

(すすり泣く、青葉の胸元に眠る。 一欠片の小さな“時の欠片”は希望だった。)



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