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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-191


トクンッ・・

・・トクンッ

【・・くっ。 くっくっ・・。】

***

「・・さっきはごめん。」

「皆のところへ、戻ろう。」

(夏樹は、穏やかに。 紫苑に手を差し出した。)

「・・うん。」

(紫苑は、夏樹に答えを聞かなかった。 ただ、差し出された、
白い手を見つめ。 微笑み、頷いた。 それが、夏樹に出来る、
精一杯のことなのだと。 感じられた。)

「ケーキ、美味しそうだったね。」

「皆で食べよう。」

(夏樹の差し出した、指先は冷たく。 わずかに触れるのも、躊躇われた。)

『海に来たせいかな・・。』

『記憶が、混乱している。』

『子供の頃のことが。 思い出される気がする・・。』

『僕は、ソラとは違う。 まるで、ソラの持つ力の様に、

いつも眩しく輝くソラに。 いつも素直なソラに。』



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