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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-192


『羨ましいとさえ思った。』

(夏樹は、紫苑の手を、握ることさえ。 躊躇われた。)

『どうして、僕なんだ。

ソラなら、きっと。

皆を幸せにするだろう。 地上を救い。 エアリエル国を守るだろう。』

(指先に、わずかに触れた、夏樹の手を。)

(紫苑は、勇気を出し。 握りしめた。)

「・・っ。」

『紫苑さん。』

(氷の様な夏樹の手に、重なる紫苑の温かな体温は。
夏樹の心を溶かす様だった。)

『僕は、失うのが怖いと思ったんだ。

皆を。

この街を・・。

この街に住む人々を・・。』

(夏樹は、自分の。 正直な気持ちに気付いた。)

(決して、認められない、想いだった。)

(紫苑は、涙を残す瞳で。 夏樹に笑顔を向けた。
その笑顔は眩しく。 夏樹は、言葉に出来ずに。 紫苑の手を、強く握り返した。)



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