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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-196


「食えない男だ。」

(石垣は、対面する空席に。 ありありと、聖の姿を思い描くことが出来た。)

「くっくっくっ。」

(姿がそこに無くとも。 異空間の向こうから、こちらの動向をうかがっている。)

『何を想う、聖よ。』

(石垣は、面白そうに目を細めた。 石垣の目には、異空間の向こうに。
悠然と腰を下ろし。 白いスーツの腕を組み、金色の瞳を輝かせ。 笑みを浮かべる、
聖の姿があった。)

『大人しく、我々にされるがままにしておくは、』

『裏があるか?』

(黒に包まれる部屋の中で。 透明に、目に見えない、異空間通路の壁を隔て。
聖の白い波動が、石垣を捉え、離さなかった。)

(黄金色の瞳の輝きが。 こちらが動くのを、今かと、待ち焦がれている。)

「我らが動けば、その異空間の壁の向こうから。 姿を現し、」

「私の命を奪うつもりか。」

「あはははははっ!!!」

「笑止!」

(石垣の瞳は、狂気に燃え。
骨ばる手が、机上の物を掴むと、前方に向かい投げ捨てた。)

「“鍵”を手にするのは! この私だっ!!」



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