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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-20


「良い香りがする。」

『この香り・・。』

『“聖なる樹の花”』

『そうだ、これは・・。』

『花祭りの、前日だ。』

(ソラは、過去の自分の中に入り。 記憶を、辿っているようだった。)

(少しずつ。 何が起こったのか。 思い出し始めていた。)

『懐かしい・・。 城の中庭にある、水場から。』

『エアリエル国の、国土が見渡せた。』

『城下に広がる街は。 ほのかに、ピンク色に色づき。』

『花祭りの季節を、迎えていることを知らせている。』

『街の向こうには、広大な、青の森。 魔物の住む、山々。』

『騎士団長の、カイが。 探索を終え、間もなく、城へ戻って来るはずだ。』

『そして、その向こうに広がる。 砂漠の海。 砂海。』

『踏み入ることを禁じられているその場所に視線を向け。 俺は。』

『ある決意を胸に。 立ち上がった。』

(日ごろ鍛えた、ソラの腕はたくましく。 筋肉のある背中に、鮮やかな水色の髪から
清らかな水滴がこぼれ落ちた。)



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