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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-21


「散りはじめている。」

(水色の瞳は、目の前に広がる国土から、自分の胸の前に揺れる水面に向けられ。)

(心地よい水の中で。 肌に触れた。 幾つもの花弁を、片手ですくい上げた。)

パシャッ・・ ポチャンッ・・

(輝く太陽の下。 ビー玉の様な水色の瞳が。 水面に落ちた、手の中の花弁を見つめ。
静かに握り締めた。)

「クゥッ・・」

(水場から、ソラを見下ろす。 大きな影がある。 見上げ、ソラは微笑んだ。)

「クウ。 大丈夫だ。 元気だよ。」

(そう言うと、自分を甘噛みしてくる。 巨大なくちばしに、目を細め。
お気に入りの頬の横を、ふわふわする羽毛を撫で。 その生き物が、心地よくソラに
甘えるのを許した。)

「クウッ」

(大きな生き物は。 ワシの様な頭と翼を持ち、身体はライオンの様で大きな手足を
していた。 二人はしばし触れ合い。 ソラの心は和んだ。)

『懐かしいな・・。 アオも元気だろうか。』

(ソラは、眩しい日差しの中、水場から上がると。 美しい、白い正装に
袖を通し。 水色の髪につく、水滴を払った。)

「サラに会おう。」

「セナを、皆を呼ぶんだ。」

(窮屈だからと、いつも着慣れない、正装が。 今日のソラには、重く感じた。



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