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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-22


襟元を留め、胸元に輝く。 王家の紋章に、指が触れた。)

(二つの樹が絡み合い、伸びてゆく様を描く紋章が。 鮮やかに、ソラの目に映る。)

(美しい装飾が。 鮮やかな水色の髪と瞳に映え。 似合っていた。)

コッ コッ

「祈りの塔に。 いるかな。」

「サラ。」

(石造りの塔のゲートをくぐり。 塔の中へ、足を踏み入れた。)

(途端に、香る花の香り。 青い石で組まれた、塔の内部は。 まるで、自然の
洞窟のようだった。 建物の内部でありながら、石の間から、清らかな水が湧き。
壁を伝い、足元の床へ。 小さな小川を作り、天窓から射しこむ光に床や壁に茂る緑が。
色鮮やかに光り。 塔の中心に立つ、立派な1本の樹が。 満開で。)

(花を咲かせるその姿に。 ソラは、途端に息を飲み。 想いを強くした。)

「・・いないのか?」

(ソラは、樹の側まで歩み寄った。)

『王家の“聖なる光の樹”よ。』

(ソラは、その前に立ち。 目を閉じた。)

「女王サラは、“光の樹”から生まれた。 俺も、同じく、ここから生まれた。」

「“光”の次には、“闇”を王とする。」

「だから俺は、王になれない。」

(“聖なる樹”の周りは、空気が澄み。 清らかな水の流れに。 ソラの心も洗われた。)



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