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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-26


「君は・・?」

(ソラは瞬き。 眩い少女を見つめた。)

(“聖なる樹”の花の下で。 微笑む少女の肌は白く。 深い紺色の
柔らかなソバージュの短い髪。 深い紺色の瞳。)

(現在から、過去の記憶をさかのぼる、ソラに。 その人が誰なのか、すぐに分かった。)

『粒樹・・。』

『戴冠式の前日。 そうだ、俺は。 あの時、リュウジュ姫に出会った。』

『あれは、幻だったか。 いや。 きっと、あの時。』

『粒樹は、まだ地上で生きていたんだ。』

『俺の願いを聞き。 微笑んでくれた。』

(ソラは微笑み、消えてゆく少女の姿を追い。 手を伸ばした。)

「え・・っ! 待ってくれ・・っ!」

(風が湧き起こり。 花弁の中に、舞い上がり。 “聖なる樹”の花の上へ。
見上げる大樹の上へとその姿は溶け込んだ。)

キンッ・・!

「あぁ・・っ。」

(ソラは力強く、手を伸ばした。 指先が、消えゆく粒樹に触れる時。)

(ソラはまた、幻を見た。)

「・・夏樹・・。」



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