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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-33


(ガラスの様に美しく、透明な瞳が、ソラを見つめた。)

「セナ。 俺は、本気だ。」

(水色の瞳は、負けじと睨んだ。 ソラは密かに。 セナに告げていない、
もう一つの決意を。 胸に抱いていた。)

(透明な瞳は、ソラの心を探る様で。 魔力を秘める気配が、ソラを包み、
問いかけるようだった。)

「覚悟は出来たか、ソラよ。」

「この国を愛す者には、選び難い選択だ。」

「滅びゆくこの国を残し。 異国の地へと、去るやもしれん。」

(ソラは頷いた。 心の中に秘める、もう一つの決意を。
口に出せば、必ずセナに反対されると分かっていた。)

「お前に望むことは。 何も、王になることだけではない。」

「それは、難しいことだと。 皆知っている。」

「誰のせいでもない。 お前の能力、努力ではない。 生まれ持つ力のことだ。」

「それは、お前には選べん。」

「だが。 国民が、お前を望むのはなぜか。」

「お前が好きだからだ。」

「祭りの宴で喜ぶ人々を。 絶望に突き落とすことがあってはならぬ。」

「人々がお前を送り出すのは。 お前の笑顔を見たいと思うからだ。」

「国民を、笑顔にしてみせよ。」



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