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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-40


「初めから、負けが分かっている戦いじゃ。」

「若き王子よ。 なぜ、挑む?」

「わしに、この国に。」

「残された時間。 静かに暮らさせてはくれぬか?」

(長老の灰色の瞳は、冷たく。 組まれた、しわの手は固く。 血の気の無い顔に、
疲れの色がにじんだ。)

「爺・・。」

(ソラは、古くからこの国を動かして来た人々が。 諦めに沈み。
心を閉ざしていることに。 胸を痛めた。)

「まだ、終わりじゃねーだろ。」

(水色の瞳は、熱く燃えた。)

「終わりがあるのは、いつでも同じじゃ。」

「わずかに、永らえたところで。」

「何になる?」

(灰色の瞳は、冷たい絶望を宿し。 目を逸らさずに、ソラを睨んだ。)

「苦しみの時を、永くするだけ。」

「永遠の幸せは、訪れぬ。」

「今ある時を生きるのじゃ。 苦を負うことはない。」

「お主が触れようとする、“呪い”は深い。」



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