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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter100 『涙』 100-78


(ソラは走り、部屋の中を横切り。 正装に手を掛けた。
美しく整った、白い服を素早く羽織る。 肩に輝く、金の紋章。
袖に通す時。 ソラは一瞬立ち止まり。)

(右手に宿る、熱を確かめた。)

(拳を握り、再び素早く。 身支度する。)

ガタタッ

(バルコニーへ続く、窓辺に戻ると。)

(これまで、幼い頃から、過ごした自分の部屋に振り返り。)

(見つめた。)

「・・・。」

サァァァーッ

(振り返る、水色の瞳には。 昨日まで、当たり前に過ごして来た部屋が。
貴重な思い出が詰まり、二度とは帰れない場所に思えた。)

(素朴で、温か味のある、お気に入りの家具。 友達にもらった、思い出の品々。
子供の頃、サラに読んでもらった本。)

(悪戯して、つけてしまった柱の傷。)

(エアリエル国中を探検し、集めたガラクタに見える宝物。)

(ミイがくれた、手作りの人形も。 部屋の片隅に、飾ってあった。)

「・・っ。」

(ソラは、なぜ、そんな気持ちがするのか。 分からなかった。)



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