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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-107


キッ カチャンッ

(身支度を整え。 その日の夕刻、カフェ『青』を閉めた。)

(そこへ、二度と戻れない予感を抱き。
「closed」へ、看板を裏返すと、しばらく指先を離せずにいた。)

コロッコロッ

「・・あ。」

(千歳は、瞬間ぼんやりし、手元に抱えていた袋から。
オレンジがこぼれた。)

【くすっ。 すぐに、戻って来れるよ。】

(瑠衣が買ってきた食材を。 無駄にしたくないからと。
千歳は、荷物と一緒に、果物や野菜を抱えていた。)

【僕が、持つ。】

(はたから見れば、仲の良い夫婦が、買い物帰り。
寄り添っているだけに見えた。)

(瑠衣は微笑み、小さな指輪の光る千歳の手から、ビニール袋を受け取ると。)

コロッ

(道路に転がってゆくオレンジを拾いながら、千歳から離れた。)

キキキッ

「・・・。」

(遠くに、車の音がし。 瑠衣は、顔を上げた。)



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