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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-13


「僕は、生まれたんだ。」

(酷い頭痛が襲った。)

(知りたいと思う度、何かが阻んでいるようだ。)

リーン・・

(目まいがする程、重い力が夏樹を圧迫した。 だが、
知りたいと思う心が。 夏樹を、あの雪景色に運ぶ。)

***

「はっ。 夏樹様。」

(菖蒲は、皆の元に残り、夏樹の帰りを待っていた。)

「紫苑お嬢様も、お戻りになりませんね。」

「様子を見に行ってきます。」

(菖蒲は、胸の中に、何かを感じた。)

(それは、夏樹を想うとき、時折起こることだった。
菖蒲は、それが。 自らに眠る力であり。 夏樹の記憶を
呼び覚ましているのだと。 気づいていなかった。)

(皆のいるキャンプ場は、穏やかで。
昇る太陽が、暑い日の始まりを告げていた。)

(だが、何かが起こる。 予感がした。)

「お願い。」

「ここを片付けたら、わたしたちも迎えに行くわ。」



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