HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-131


『わたしの元にも、幸せは訪れた。』

(人生で、一番嬉しい日を。 千歳は思い返した。)

『暑い。 夏の日だった。』

『夏の日差しと、セミの声。 青い空。』

(眩く射しこむ光に包まれ。 二人の産声が響いた。)

(白く柔らかなシーツの上で。 産婆から、赤ちゃんを見せられ。
千歳は、汗と涙の光る頬に、満面の笑みを浮かべた。)

「・・可愛い赤ちゃん。」

「・・っ、生まれてくれて、ありがとう。」

(千歳は、汗ばむ手で、二人の小さな頬に、思い切り頬を寄せた。)

「・・っ、・・っ。」

(嬉しくて、嬉しくて。 涙が止まらなかった。)

「・・っ、かわいらしい。 茶色の髪、わたしに似てる。」

(千歳が手を差し出すと。 小さな手が、指先を握りしめた。)

「あなたは、綺麗な、紺色の髪ね。」

「・・、瑠衣に・・。 良く似てる。」

「そうね。 あなたは・・、夏生まれだから、夏樹。」

「あなたは、千波ね。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ