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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-135


(千歳は、目をこする千波を怖がらせないよう。 微笑んだ。)

「・・お母さん。」

(夏樹は、千歳の腕の中で、背後を振り返った。)

「行こう、夏樹。 大丈夫。」

(三人は、依子に援護され。 夜の闇の中へ、逃げ出した。)

「はぁっ・・。 はぁっ。」

(親子は追手を避け。 依子の友の者が用意してくれた小さなアパートに身を寄せた。)

(足取りを掴まれぬよう、遠巻きに。 友の者が守ってくれた。)

(途中、千歳は。 仄暗い街灯に浮かぶ、公衆電話に駆け込んだ。)

キイッ カチャンッ

「はぁっ。」

『たまらなく、怖かった・・。』

(裸足で。 アスファルトを歩く、
夜露に濡れた草と、石の粒が、足裏を、刺激した。)

(靴は履いて、出られなかった。)

(気丈でと、思ったが。
逃げ切ったと思ったら、途端に。

夜のアスファルトが冷たいせいか、
足先と、指先が震え。

上手くボタンを押せなかった。)



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